前妻の子供がいる場合の相続手続き~トラブルを防ぐには?

前妻との間に子供がいた場合、親権を父親が持っておらずとも民法上では前妻の子供と再婚後の子供には同じ相続権があります。
たとえ何年も前妻の子供と会っていなかったとしても、法定相続割合は同じです。

なお、前妻とは離婚した時点でお互いの財産は清算されているはずなので、法律上は前妻は相続人ではありません。


前妻の子供とはほとんど交流が無く、再婚後の妻と子供にのみ財産を遺したい場合は、相続手続きとして遺言書を作っておくという手があります。
ただし、遺言に全財産を再婚後の妻と子供に残すと書いていても、前妻の子供には遺留分を請求する権利はあります。
このことを考慮する必要はありますが、遺言に個人の遺志がはっきりと書かれている場合、個人の遺志を尊重して、遺留分請求の相続手続きを行わない可能性も考えられます。

確実に再婚後の妻と子供に多く遺産を遺したいのなら、遺言の作成、とくに公正証書遺言を作っておくことをおすすめします。

なお、遺留分とは相続人に不利益な事態が発生するのを防ぐための制度で、相続人には遺産の一定割合の取得が保障されています。
遺留分請求の相続手続きは家庭裁判所に出向かずとも、内容証明郵便の送付で事足ります。
前妻の子供の遺留分は、再婚後の子供と同じで法定相続割合の2分の1です。


遺言が無かった場合、前妻の子供にも再婚後の子供と等しく相続権はあります。何年も交流が無いので前妻の子供にも黙って相続手続きを進めたい、というのは遺言が無い限り不可能です。法定相続割合に従って遺産を分割しないなら、前妻の子供を含めた相続人全員の同意がなければ遺産分割協議は成立しないからです。

たとえ黙って遺産相続手続きを進めようとしても、相続手続きの際に求められる書類として戸籍、各種書類への相続人全員の署名、実印の押印、印鑑証明書の提出が必要です。
戸籍には前妻や前妻の子供も記載されているので、相続人全員の押印等がそろっていないことはすぐにバレてしまいます。

しかし、生前に公正遺言証書を作成しておけば、前婚の子供に連絡せずに相続手続きを終わらせることはできます。
公正遺言証書の中で再婚後の妻と子供のみに相続させるとすれば、彼らの署名押印、印鑑証明書があれば相続手続きが完了できるのです。

しかし、前婚の子供にも遺留分は認められているので、後から請求された時にトラブルにならないよう、遺留分についても考慮しておいてください。また、相続人と言う身分が証明できれば公正証書遺言は全国の公証役場で検索することが出来るので、前妻の子供が遺言を読むことは防げません。



相続手続きが開始されると、遺産の分配を決める遺産分割協議を行います。協議は相続人全員の同意が必要で、1人でも欠けている場合の協議結果は無効です。

結婚歴があり前妻との間に子供がいる場合、この時の相続人の中には前妻は含まれませんが前妻の子供は含まれます。
前の結婚から再婚の期間が何年も空いていて全く交流がなかった場合、前妻の子供の存在を相続手続きの開始後に知ることもあるでしょう。

相続手続きで初めて知った前妻の子供に遺産を渡すのは抵抗がある、といったトラブルも想定できますが、何年も交流していなかった場合、前妻の子供が行方不明などで連絡がとれない、というトラブルも起こるかもしれません。
この時は連絡がとれないから協議は欠席、という単純なことではなく、特別な相続手続きが必要です。

ひとつは家庭裁判所で不在者財産管理人を選任してもらうことです。
不在者財産管理人が前妻の子供の代理として協議に参加します。もうひとつは失踪宣告という制度の利用で、こちらも家庭裁判所への申し立てが必要です。

普通失踪の場合、7年間行方不明なら死亡扱いで遺産分割協議の相続手続きを進められるのです。

相続手続きの開始で前妻の子供という存在が発覚し、しかも連絡が取れない場合は、このように相続手続きが煩雑になりがちです。
司法書士や弁護士など専門家に相談すべきでしょう。