相続手続き基礎知識
相続とは
このサイトは、「相続手続き」をテーマとしたサイトですが、そもそも相続とは何でしょうか?
今回から、相続について、深く掘り下げていきたいと思います。
相続とは、一言で言うと、「亡くなった方の財産法上の地位を、法律及び亡くなった方の最終の意思の効果として、亡くなった方と一定の親族関係のある者に承継させる」ことを言います。
なお、相続には以下の特徴があります。
相続は自然人が死亡した時に発生する
まず、当然のことのようですが、相続は自然人固有のものであり、法人に相続は発生しません。
また、相続は自然人が死亡したことによってのみ発生します。
明治民法で生前の相続開始原因とされていた「隠居」「国籍喪失」などの事由は、現代の法律では、相続発生原因とはされていません。
相続は財産上の地位の承継である
相続は、財産法上の地位(亡くなった方が有していた権利・義務)の承継であり、身分法上の地位の承継ではありません。
これは、身分法上の地位は一身専属的なものであり、相続人に承継させるのに適さないからであり、またその必要性もないからです。
相続は法律の規定と亡くなった方の最終の意思に従って生じる
相続は、法律の定めに基づいて、人が死亡すると、被相続人や相続人の知・不知にかかわらず、当然に発生します。
また、法律には、相続人たる地位を有する者・その者が相続できる割合なども規定されています。
なお、被相続人は、生前に、遺言という形で財産の承継方法等を指定することができます。
この遺言がある場合には、上記の法律に基づく相続を修正することもできます。
相続・遺贈したい者が先に死亡した場合に備えたい場合(遺言書文例・その7)
遺言書に、特定の者に「相続させる」あるいは「遺贈する」と記載しても、その相手方が遺言者より先に亡くなった場合には、その部分については、遺言の効力が生じないこととなってしまいます。
そのようなことを避けるために、万が一のことが起こった場合のことも、あらかじめ定めておくことができます。
ただし、あまり先のことを色々と定めておくよりも、遺言作成時と事情が変わった場合には、その都度、遺言書を書きなおしていくことをおすすめします。
遺 言 書
1、遺言者の下記財産は、遺言者の長男○○に相続させる。
ただし、長男○○が遺言者より先に死亡した場合には、下記財産は、長男○○の子○○が相続する。
東京都台東区○○の土地
東京都台東区○○ 家屋番号○○の建物
2、上記以外の財産は、遺言者の妻○○にすべて相続させる。
平成26年9月1日
東京都台東区○○
遺言者 ○○ ○○ ㊞
遺言書により子供を認知したい場合(遺言書文例・その8)
婚姻関係にない男女の間の子を非嫡出子と言います。
非嫡出子の、母子関係は分娩の事実によって、はっきりしている場合がほとんどですが、父子関係については、何らかの手続されない限り、客観的にはっきりとしません。
そこで、「認知」という戸籍上の届出が必要となります。この認知により、非嫡出子の父子関係が成立します。
なお、認知は遺言によってもできますので、記載方法は以下で確認してください。
この場合、遺言執行者が、遺言の効力発生後に戸籍の届け出をすることになりますので、必ず遺言執行者を定めておくようにしましょう。
遺 言 書
1、遺言者は、以下の者を認知する
本籍 東京都北区○○
住所 東京都北区○○
氏名 ○○
生年月日 平成18年10月1日
2、遺言者下記財産を、○○に相続させる。
○○銀行 新宿支店 普通口座 123456
3、遺言執行者として上記○○を指定する。
平成26年9月1日
東京都板橋区○○
遺言者 ○○ ○○ ㊞
財産を慈善団体や、お世話になった法人に寄付したい場合(遺言書文例・その6)
慈善団体などに、財産を寄付したい場合には、事前に寄付が可能かどうかを、その団体に確認しておくのが良いでしょう。
というのも、こういった団体や、法人の中には、寄付を受けないところもあるからです。
なお、寄付する団体が確実に特定できるよう 、名称や主たる事務所の所在地については、登記簿謄本などで確認し、正確に記載するようにしましょう。
遺 言 書
1、遺言者のすべての財産を、公益社団法人○○(主たる事務所 東京都世田谷区○○ )に遺贈する。
2、遺言執行者として下記の者を指定する。
住所 東京都板橋区○○
氏名 速水陶冶
職業 司法書士
平成26年8月28日
東京都新宿区高田馬場○○
遺言者 ○○ ○○ ㊞
内縁関係にある相手方に財産を残したい場合(遺言書文例・その7)
法律上、婚姻関係にない相手方には、相続権がありません。
そのため、内縁の妻または夫に財産を残してあげたいと思う場合には、必ず遺言書を書かなくてはなりません。
遺 言 書
1、遺言者のすべての財産は、遺言者の内縁の妻である下記の者に遺贈する。
本籍 神奈川県横浜市○○
住所 東京都板橋区○○
氏名 ○○
生年月日 昭和20年1月20日
2、遺言執行者として上記○○を指定する。
平成26年8月28日
東京都板橋区○○
遺言者 ○○ ○○ ㊞
祭祀の主催者を遺言で指定しておきたい場合(遺言書文例・その8)
お墓や仏壇などの財産は、相続財産ではありません。
これらのものは、被相続人が「祭祀を主宰すべき人」として指定した人が承継し、もしこの遺言者の指定がない場合には、慣習によって祭祀を主宰すべき人が承継することになります。
したがって、特に遺言で祭祀を主宰してほしい人を指定しておく場合には、以下のような遺言となります。
遺 言 書
1、下記の財産は、遺言者の長男○○(住所 東京都豊島区○○ ・昭和○○年○月○日生)に相続させる。
東京都豊島区○○の土地
東京都豊島区○○ 家屋番号○○の建物
2、上記以外の財産は、遺言者の妻○○にすべて相続させる。
3、○○家の祭祀を主宰すべきものとして遺言者の長男の○○(住所 東京都豊島区○○ ・昭和○○年○月○日生)を指定する。
以上、遺言する。
平成26年8月28日
東京都新宿区高田馬場○○
遺言者 ○○ ○○ ㊞
今回は前回に引き続き、自筆証書遺言の記載例を見ていきたいと思います。
家業を継ぐ相続人に事業に関する財産を相続させる場合(遺言書文例・その3)
遺 言 書
1、下記財産は、家業を継ぐ遺言者の長男○○に相続させる。
豊島区池袋1丁目2番3の土地
豊島区池袋1丁目2番地3 家屋番号 2番3の建物(本社建物)
甲株式会社の株式のすべて
A銀行 新宿支店の預金のすべて
B銀行 新宿支店からの借入債務のすべて
2、下記預金は、遺言者の妻○○に相続させる
新宿区高田馬場1丁目2番3の土地
新宿区高田馬場1丁目2番地3 家屋番号 2番3の建物(自宅建物)
3、上記以外の財産は、遺言者の二男○○に相続させる。
平成26年8月27日
東京都新宿区高田馬場○○
遺言者 ○○ ○○ ㊞
複数の相続人に、共有持分を相続させたい場合(遺言書文例・その4)
遺 言 書
1、下記不動産は、遺言者の妻○○に2分の1、長男○○に2分の1の割合で相続させる。
新宿区高田馬場1丁目2番3の土地
新宿区高田馬場1丁目2番地3 家屋番号 2番3の建物
2、上記以外の財産は、遺言者の二男○○に2分の1、三男○○に2分の1の割合で相続させる。
平成26年8月27日
東京都新宿区高田馬場○○
遺言者 ○○ ○○ ㊞
相続人以外の人に財産を譲りたい(遺贈)場合(遺言書文例・その5)
遺言によって、相続人以外の人に対して財産を譲ることを「遺贈」といいます。
この場合には、譲る相手方が特定できるよう、相手方の氏名住所に加え、生年月日なども記載するようにしましょう。
また、遺贈の場合には、必ず遺言執行者を指定しておきましょう。
遺 言 書
1、下記の財産は、遺言者の長男の妻である○○(住所 東京都練馬区○○ ・昭和○○年○月○日生)に遺贈する。
A銀行 新宿支店 普通預金123456
2、上記以外の財産は、遺言者の妻○○にすべて相続させる。
3、遺言執行者として下記の者を指定する。
住所 東京都中野区○○
氏名 速水陶冶
職業 司法書士
平成26年8月27日
東京都新宿区高田馬場○○
遺言者 ○○ ○○ ㊞
前回は、相続税の対象となる財産の種類等を見てきました。
今回は、相続税の計算にあたって、その遺産をどのように評価をすれば良いのかを解説していきたいと思います。
相続税の対象となる財産の評価方法
土地 → 路線価方式または固定資産税評価額に一定倍率をかける倍率方式
建物 → 固定資産税評価額
動産 → 亡くなった当時の時価
債権 → 亡くなった当時の額(ただし、借地権については、税務署が評価する更地価格に一定割合をかけた額)
現金や預貯金 → 亡くなった当時の額
株式等の有価証券 → 亡くなった当時の時価
死亡保険金 → 非課税限度額を控除した額
死亡退職金 → 非課税限度額を控除した額
生命保険等の掛け金 → 解約返戻金の額
相続発生前の3年以内に贈与された財産 → 贈与された時の時価
相続時精算課税制度を利用するために贈与された財産 → 贈与された時の時価
相続税の軽減
配偶者の税額軽減
被相続人の配偶者の課税価格が1億6000万円以下であるか、1億6000万円を超えていたとしても、法定相続分に相当する額以下であれば、相続税はかからないことになっています。
未成年者控除
相続人である未成年者(20歳未満の者)については、20歳に達するまでの年数につき、1年あたり6万円が控除されます。
障害者控除
障害をお持ちの方については、85歳に達するまでの年数につき、1年あたり6万円が控除されます。
相次相続控除
相続発生前の10年以内に、亡くなった人が前の被相続人から相続した財産につき相続税が課税されていた場合には、その際に支払った相続税額のうち、一定金額が控除されます。
前回までで相続税が課税される場合と、基礎控除についてみてきました。
今回は、相続税を具体的に計算するにあたって考慮すべき点に着目して解説していきます。
相続税の課税対象になる財産
相続財産の課税対象となるのは、相続または遺贈により取得した以下の財産です。
・土地・建物・借地権・預貯金・現金・株式・投資信託・車・債権など。
なお、以下は、法律上の相続財産にはあたりませんが、相続税の計算においては相続財産とみなされます。
・生命保険金・退職手当金など。(ただし、法定相続人1人あたり50万円までは非課税です。)
相続税の課税対象にならない財産
・お墓や仏壇など
・宗教や慈善事業など、公益目的の事業のために使用されることが確実なもの
・心身障害者共済制度によって給付される給付金
・国・地方公共団体・公益法人に寄付した財産
相続財産から控除できるもの
・亡くなった方の借入金や未払い金などの債務
・葬儀費用(ただし、お墓の購入費用・香典返しで出費した費用などは含みません。)
・所得税・消費税・固定資産税などの税金
次回は、相続税を計算するうえで問題となる、遺産の評価方法について詳しく見ていきたいと思います。
前回までで、遺言書を書く際の基本的な知識については、お伝えしました。
今回からは、実際に遺言書を書くことを想定して、どういった文章を書けばいいのか、ケースごとに、一般的な文例を確認していきたいと思います。
全財産を、特定の相続人に相続させたい場合(遺言書文例・その1)
生前、特にお世話になった相続人に対して、遺産のすべてを相続させたいという場合や、子供がいない夫婦で、相手方配偶者に遺産のすべてを相続してほしいという場合には、下記のような遺言書を書くと良いでしょう。
ご夫婦の場合は、お互いに下記のような遺言書を作成し、お互いにそれを持ち合うという方法もあります。
遺 言 書
1、すべての財産を、遺言者の妻○○に相続させる。
平成26年8月22日
東京都新宿区高田馬場○○
遺言者 ○○ ○○ ㊞
複数の相続人に、それぞれに相続させたい場合(遺言書文例・その2)
この場合は、どの相続人に対して、何を相続させたいのかを、分かりやすく具体的に書きましょう。
遺 言 書
1、下記不動産は、遺言者の長男○○に相続させる。
新宿区高田馬場1丁目2番3の土地
新宿区高田馬場1丁目2番地3 家屋番号 2番3の建物
2、下記預金は、遺言者の二男○○に相続させる
A銀行 新宿支店 普通預金 口座番号123456
3、下記有価証券は、遺言者の三男○○に相続させる。
甲株式会社の株式 50株 (乙証券 新宿支店)
4、上記以外の財産は、すべて遺言者の妻○○に相続させる。
平成26年8月22日
東京都新宿区高田馬場○○
遺言者 ○○ ○○ ㊞
相続税が課税される人とは?
現在、日本で相続税が実際に課税されるのは、全体の約5パーセントの人たちであり、ほとんどの人たちには相続税は課税されません。
これは、相続財産の総額が、法律で定めている「基礎控除額」を超えない場合が多いからです。
「基礎控除額」とは、相続財産の総額が、その価格を超えなければ、相続税が発生しないという、基準の金額のことをいいます。
基礎控除額については、以下で詳しく見ていきましょう。
なお、相続財産の総額が基礎控除額を超える場合であっても、小規模宅地の特例などの、その他の控除の適用を受けることによって結果として相続税が課税されないケースも多くあります。
なお、これらの特例を受けるためには、相続税の申告をしなければなりません。
相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に、所轄の税務署に対して行わなければなりません。
相続人の地位を有しない人が、遺贈により被相続人の財産を取得した場合、その財産についても相続税の対象となります。
この場合、その受遺者は、下記で説明する、「相続人1人あたり1,000万円の基礎控除」の人数には含まれませんので注意が必要です。また、この受遺者にかかる税額は、通常の場合の税額に20パーセント相当額が加算されます。
基礎控除額の計算方法
基礎控除の計算方法は以下のとおりです。
5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
たとえば、お父さんが亡くなり、相続人がお母さんと、その子供2人だった場合、基礎控除額は、8,000万円という計算になります。
(5,000万円+3,000万円=8,000万円)
※配偶者が相続する分については、1億6000万円(配偶者の法定相続分が1億6000万円を超える場合は、その額)までは相続税はかかりません。
遺言を書く際、遺言が効力を発生した時に、遺言の内容を実現する「遺言執行者」を指定することができます。
今回は遺言執行者について、詳しく見ていきたいと思います。
遺言執行者の仕事
遺言執行者は、遺言に書かれた内容を実現するための人です。
具体的は、各種財産の名義変更や、預貯金の解約・払い戻しをしたり、財産を受遺者に移転したりします。
遺言執行者は、上記の行為をするための一切の権利・義務がありますので、遺言執行者の指定がある場合には、相続財産の管理処分は、遺言執行者のみが行うことになります。そのため、相続人が勝手に相続財産を処分するような行為は、できなくなります。
遺言者を指定しておくメリット
遺言執行者の指定がない場合、遺言に書かれた内容を執行するには、相続人全員の協力が必要になる場合があります。
しかし、相続人の数が多いようなケースでは、必ずしも相続人全員の協力が得られるかは分かりません。
もし、相続人の中に、遺言の執行に協力的でない人がいた場合、遺言の実現が難しくなります。
こういった場合に、遺言執行者が定めれていれば、遺言の執行に相続人の関与は不要となりますので、スムーズに遺言内容を実現することができるのです。
遺言執行者を指定するには
遺言執行者は、遺言書に記載することで指定することができます。
もし、指定が無かった場合でも、家庭裁判所に対して、遺言執行者の選任を申し立てることも可能です。
どういう人を遺言執行者に指定するか
遺言執行者に、特に資格の制限はありません。
未成年者と破産者については、遺言執行者に就任することができませんが、基本的にどんな方でも遺言執行者になることはできます。
ただし、遺言執行をするには、それなりの法律知識や事務能力も要求されますので、弁護士や司法書士などの専門職に依頼するのも良いでしょう。
今回は、遺言者が亡くなった後の、遺言書の検認手続きについて、確認していきます。
自筆証書遺言は、この検認手続きを経ないと、遺言内容を実行(相続手続き)することができない為、しっかり確認していきましょう。
自筆証書遺言の検認とは
自筆証書遺言の遺言者が亡くなった場合、遺言書を保管していた人や、遺言書を発見した相続人は、速やかに家庭裁判所に対し、遺言書の検認の申し立てをしなければなりません。
これは、遺言書の偽造などを防止するためと、相続人全員に対して、遺言書の存在を知ってもらうためです。
検認申し立てに必要な書類
遺言書検認の申し立てをする際には、遺言者が亡くなった時から、出生にさかのぼるすべての戸籍・除籍・改制原戸籍の謄本や、相続人全員の戸籍謄本が必要になります。
遺言者の方が、高齢でお亡くなりになった場合や、籍を何度も移動していた場合には、数多くの戸籍等の謄本が必要となります。
家庭裁判所での検認手続き
家庭裁判所が、遺言書検認の申し立てを受けると、相続人や利害関係人の立会いの期日を定めて、相続人全員と利害関係人に対して、呼出状を発送します。
この呼び出しは、単に遺言書の存在を、相続人等に知らせるためのものであるため、この立会期日に欠席したとしても問題ありません。
そのため、実際には、遺言書に関心のある相続人のみが出席するというケースが多いです。
検認手続きの効果
検認手続きは、上記でも確認したとおり、偽造などを防止するために行われるものであり、その有効性を確認するためのものではありません。
したがって、遺言書の検認手続きを経たからといって、その遺言書が有効なものであると確定された訳ではありませんので、注意してください。